しきりに父さんを責め続けていたけど、咲ちゃんを傷付けた自分自身も十分に身勝手だと気付かされた。



俺は彼女の気持ちに何一つ応えてあげないまま別れ言葉を口にしていた。
本当は自分と同じくらい深い傷の持ち主だったのに、いま思い返してみると彼女はいつも俺の顔色をばかり伺っていて、終いには『好きじゃなくてもいいから』とまで言わせてしまった。

結果、彼女を傷付けていた事すら目もくれぬままの状態に。


そんな自分は、当然父さんを責める権利などない。



「父さん、もう顔を上げて」

「……翔」


「実は俺も人の事は言えないんだ。尽くしてくれた人の気持ちを大事にしてあげれなかったから」

「その人は、お前の彼女なのか?」


「今は違う。思い返せば、一見簡単に見える事すらしてやれなかった。好きでいてくれたのにさ……。父さんのせいで愛し方がわからなかったよ。やっぱり俺は父さんの子だよな」



俺と母さんを傷付けた罰として少し皮肉交じりに言った。

反省する父親の姿を目にした俺自身も、彼女と別れてからも何食わぬ顔をして過ごしていた自身の愚かさに気付かされた。