それから二人は駅前の喫茶店に場所を移した。

注文したコーヒーが席に届けられると、父親は湯気が上がる白いコーヒーカップの取っ手を握りしめた。
だが、手が僅かに震えている。


ここ数年で老け込んだ姿に目が奪われていると、父親は心を決めたかのようにふと顔を見上げた。



「ずっとお前達を探してた…。離婚後にお前達が街から姿を消すとは思いもしなかったから」

「……俺の方こそ、こんな遠方に引越すなんて予想外だった。引っ越してもせいぜい近所だろうなって。母さんから街を離れると聞いたのは引っ越し前日だったし」


「そうだったのか……。お前を見つけるまでにかなりの時間を費やしたよ」



父親は再び深いため息をつく。



父さんは、小学校の卒業式より少し前に会ったっきり。

母さんと喧嘩をしていた時の父さんは怖くて嫌いだったけど、父さんとの深い絆はそう簡単に解けるものではない。

どんなに突っ撥ねても、やっぱり探し出して会いに来てくれた事が正直嬉しかった。

…だから、訪ねて来た理由を聞いた。



「どうして俺に会いに来たの?」



すると、父さんは緊張の面持ちで口を開いた。