一方、翔の心の傷の深さを痛感した父親は、ただ頭を下げる事しか出来ない。



「翔…悪かった……」

「ふざけんな……」



翔は歯を食いしばっていると、父親は地に片膝ずつ着いて再び頭を下げた。



「やめろよ。今更頭なんて下げてんじゃねーよ」

「翔……。今まで惨めな思いをさせてしまってすまない…」



翔は父親の情けない姿にやりきれない気持ちになると、荒れ狂う感情を誤魔化すように空を見上げる。

謝意を示して頭を下げたままの父親の覚悟は揺るぎない。




昔は太陽の日差しを遮るくらい大きく感じていた父の背中。
幼少期の俺は、そんな背中を目掛けて小さな身体で必死に追いかけていた。



父さんみたいに大きくなりたい。
父さんみたいに力強くなりたい。
父さんみたいな格好いい大人になりたい。



キャッチボールやサッカー。
そして夏にはプールや海。

父さんは決まったように週末に身体を動かす遊びで喜ばせてくれた。
父さんは俺の理想の父親像であり、憧れの存在でもあった。




……でも、そんな父さんがいま。
当時の謝罪をする為に頭を下げている。

日差しを遮るくらい大きかったはずの姿はもうそこにはいない。



俺はこれ以上情けない姿が見たくなくなり、父親の腕を引いて身体を起こした。



「……分かったから。話を聞いてあげるから立てよ。いつまでも息子に情けない姿を見せんなよ」

「ありがとう…」



父親は息子の優しい計らいにジワリと涙を浮かべた。