咲はぼんやりと意識が戻る。
布団に上半身がうつ伏せになって震え泣いている愛里紗に気付くと、拳に手を重ねた。

愛里紗は手の感触に気付くと、布団からガバッと身体を起こす。



「……ようやく捕まえた」



咲は穏やかな声でそう言い、開けたばかりの瞳からキラキラと涙を輝かせた。
愛里紗は手を握り返してベッドに身を乗り出す。



「咲っ………」



愛里紗は感極まりながら名前を呼んだ瞬間、涙がツーっと頬を伝った。



「意識が戻って良かった……。咲っ……咲っ………」

「もう逃げないでね。いま愛里紗が逃げたら追いかけられないから」


「逃げるわけないじゃん…」



お互いの瞳には涙がたっぷり浮かんでいる。

転落事故から数時間ぶりに言葉を交わした愛里紗達は、感極まり握り合った手が僅かに震えていた。