病室の扉を開けて中に入ると、咲は左奥のベッドに横になっていた。
私達二人は眠っている咲を起こさぬよう、足音を立てずに配慮しながらベッドの隣に立ち並ぶ。



ベッドにはスヤスヤと寝息を立てながら眠る咲。
今は辛い事を忘れてしまったかのように安らかな表情をしている。



咲の顔を久々に間近で目にした。
期末テストの日にケンカ別れをしてしまったから、こんなに間近で目に映すのはおよそ一ヶ月ぶり。



私に謝ろうと努力していたのにも拘わらず、ずっと無視され続けていたせいか、頬がすっかりやせ細っていて、ほんのりとピンクだったホッペは血色が悪く目の下にはクマができていた。


そして、階段から落下した時に出来たと思われる青あざがおでこと顎に。
切れた唇。
手首と足首には包帯が巻いてある。

その姿は、仲良く過ごしていたあの頃とはまるで別人のよう。



咲はお人形さんのような可愛い顔なのに。
ガーゼを貼られてアザだらけの顔は、幸せからは程遠いところに置いてけぼりにされてしまっている。



……全部私のせいだ。

少なくとも記憶の中の咲はいつも笑顔だった。
そして、私はいつも咲の笑顔に助けられていた。


助けてもらっていたと痛感した瞬間は、残念ながらベッドで眠る傷だらけの咲の姿を目にしている今。



ごめんね……。
心も身体もいっぱい傷つけちゃったし、少しずつやつれていった事にも気付いてあげれなかった。


私は親友なのに最低だね。
辛い時は私が守ってあげなきゃいけなかったのにね…。