おばさんに帰るように言われたけど、私はどうしても今日中に謝りたかった。
小さな歪みが、こんな大事件に発展するなんて思いもしなくて……。



愛里紗は無表情のまま首を左右に振る。



「咲が目を覚ますまで傍に居させて下さい。実は咲とケンカしたんです。咲は何度も謝りに来てくれたのに、私は話すら聞かなかった……。今回の件は私が悪かったんです。どうしても今日中に謝りたいから、面会時間ギリギリまで傍にいさせて下さい。お願いします」



愛里紗は自分の胸まで頭を下げた。
木村は愛里紗の想いが届くと、同じく母親に大きく頭を下げた。

すると、母親は降参したかのようにフーっとため息をつく。



「愛里紗ちゃん達には参ったわ。それじゃあ、咲をお願いね。私は仕事を途中で抜け出して来たから一旦戻らないといけないの。咲なら315号室の個室にいるわ。仲直りできるといいわね」

「おばさん、ありがとうございます!」


「愛里紗ちゃんが咲の傍にいてくれて本当に助かるわ。私達の離婚が原因で咲は精神的に参っていたから今回の事故に繋がったのかもしれない。咲に迷惑をかけたのは愛里紗ちゃんじゃなくて、実は私達なの」

「えっ…、離婚ですか。知らなかった……」

「……」


「学校では知られたくなくて旧姓を名乗っていたみたいだけど、愛里紗ちゃんにも話していなかったのね」

「あ……、はい」

「だから、受付で聞いても駒井の名前は見つからなかったんだな。この病院に搬送された事に違いないのにおかしいなって思ってた」



咲の母親は言いたい事を伝え終えると、愛里紗達とバトンタッチをするように二人の肩をポンッと叩いた。

咲の母親に真実を知らされた瞬間、行方不明になった原因にようやく辿り着いた。