私達は再び受付前の椅子に座って待つ事に。
二人は肉体的にも精神的にも疲れ切っていて、いつしか会話も途切れ途切れに。



『今日はもう帰ろう』

『ううん、あともう少しだけ待つ』



こんな会話を幾度となく繰り返しながら、静かに二人で椅子に座っていた。





ーー時計の針が17時半を回った頃。

咲の母親がスマホを手にしながら病院の奥から受付付近へと姿を現した。
愛里紗は咲の母親を視界に捉えた瞬間、咲が病院内にいると確信する。


愛里紗は無言で立ち上がると、咲の母親の方へ吸い込まれるように駆け寄って行く。
隣に座っている木村は手荷物を持って後を追う。



「咲のお母さん!咲はっ……咲は、この病院内にいるんですか?咲は……咲の容態は……」



愛里紗は、病院内の出入り口に向かっている母親に聞きたい事が沢山あったせいか、息をつく間もなく質問攻めをする。