木村は院内に戻ると、深いため息をつきながら背中を丸めて座ってる愛里紗の目の前にスマホとレジ袋を一緒に突き出した。
「昼メシまだだったから一緒に食おう」
「あはは、自分の事なんてすっかり忘れてた」
「駒井の親はまだ来てない?」
「うん…。まだ会ってない」
「じゃあ、病院の出入り口付近のベンチに座ってメシを食いながら駒井の親が来るのを待つとするか」
木村は私の自宅に連絡した後、病院近くのコンビニへ行って自分達用のおにぎりを買ってきてくれた。
外は日が傾き始めて身震いするほどの冷たい風にさらされながらも、冷たいおにぎりと温かいお茶を口にしながら、病院前のベンチで次々と訪れる来院者を木村と二人で見届けていた。
暗闇に包まれ始めても、咲の両親は一向に姿を現さない。
だから、咲が本当にこの病院に搬送されたか確信が持てなくなった。
咲の容態が気になって仕方ない。
あれから意識は回復したのだろうか。