ーー病院前のバス停に到着。

愛里紗はバスを飛び降りてから全力で病院に走った。
木村はバスを降車していきなり走り出した愛里紗の背中を見るなり、焦るように後を追う。


愛里紗は気焦りしているせいか、開き途中の自動ドアに身をねじ込ませるかのように通り抜けて院内へと入る。

ハァハァと息を切らしながら病院の受付に着くと、咲の安否が一刻でも早く知りたくて、受付カウンターに身を乗り出しながら受付事務員に問い尋ねた。



「あのっ……。先ほど救急でこちらの病院に搬送された駒井 咲ですが、容態はどうなんですか?病室はどちらですか?お願いします。教えて下さい」

「おい、落ち着けよ。まだ検査中だろ」

「あ、はい……。お名前は駒井 咲様でお間違いないでしょうか」


「はいっ!」

「只今お調べしますので少々お待ちください」



アツくなっている愛里紗とは対照的に、受付事務員は事務的な対応で手元の資料に一度目を通した後、手元のパソコンで名前を検索。

愛里紗にはそんな僅かな時間ですらもどかしく感じていたが、木村は隣で冷静に見守っている。


だが、咲の名前を調べ終えて手を止めた受付事務員は、ドキドキしながら結果を待つ二人の期待を裏切る。



「本日救急搬送された方のデータを全てお調べしてみたのですが……。駒井 咲さんという方は本日こちらに搬送されておりません」



受付事務員は二人にキッパリとそう言い切った。