愛里紗は養護教諭から病院の所在地が書いてあるメモを受け取ると、木村と二人で咲の搬送先の病院にバスで向かった。



精神的に不安定な私に振り回されている木村には、迷惑をかけ続けて悪いなと思って病院の付き添いを断った。
でも、首を横に振る彼自身も私と同様、咲が心配でたまらない。





バスに乗り込んでから中央扉のすぐ後ろの二人席に座った。
木村は通路を挟んだ反対側の一人席に座る。

窓に映すお互いの目線はそれぞれ別方向の景色を眺めていた。



バスの全体を時計に見立てるとしたら、木村は2時の時針、私は50分の分針方向を向いていた。

私と木村は別々の方向を向いているけど、心の中では12時ジャストの方向に向け、同じく咲の容態を心配をしている。

流れ行く外の景色を眺めながら、お互い無言のまま物思いにふけっていた。