木村は踊り場に着くと、ストンとひざまずいて咲の耳元に顔を寄せる。



「……こ……駒井。おいっ…意識はあるか?おいっ……おいっ……」



咲は木村の呼びかけにピクリとも反応しない。
次第に木村の顔色は青ざめていく。



愛里紗は二人の状況を目に映しつつも、無力に立ち尽くしていた。
だが、木村はそんな愛里紗をキッと睨みつけて怒声をあげる。



「江東!何ボーッと突っ立ってんだよ。早く先生呼んで来いよ。駒井を助ける気あるのかよ!お前は親友だろ」



悲痛に叫ぶ声で、愛里紗はようやくスイッチが入った。
根付いていた足を振り切ると、一目散に職員室へ。



走って、
走って、
全力で走りまくった。


袖で涙を拭いながらがむしゃらに階段を後にしたのは覚えているけど、それからどうやって先生を呼びに行ったのか覚えていない。



もし、木村が現場に現れてくれなかったら、私はどうしていたんだろう……。