咲の悪口を聞き取ったあの日から、また悪口が繰り返されるんじゃないかと思って彼女達をマークしていた。
トイレ側に背中を向けていても、彼女達がまた悪口を言ってるに違いないと確信している。



「あ〜、わっかるぅ。あいつの声って、高いから他の人の声に紛れる事がないよね」

「超ぶりっ子だよね。先生にも媚び売ってんじゃないの?」

「だから、あんなに成績優秀なんだぁ。うわぁ、サイテー」



癇に障りワナワナと身体を震わせながらゆっくり後ろに振り返ると、予感は的中。
一組の女子三人組は、まるで咲を見下しているかのように、面白おかしく想像だけで話を繰り広げていた。



ケタケタと小バカにしたような笑い声が胸を突き刺す。
耳に入れたくなくてもねじ込んでくる悪口にはらわたが煮えくり返ると、握りしめた拳が大きく震え出した。



ひどい……。
咲の事を何も知らないのに、好き勝手に言いたい放題。


教師に対する想いを知らないクセに。
影の努力を知らないクセに…。
夢を知らないクセに……。