十二月下旬に愛里紗と念願の再会を果たした翔は、終業式の日に恋人だった咲と別れてから毎日思いふけっていた。
街を出てから、約束していた手紙を送り続けても愛里紗とはコンタクトがとれなかった。
長年に渡り一途に思い続けていたけど、音沙汰がなかったせいもあって、頭の片隅では何処かで諦めをつければならないと思っていた。
彼女と連絡がつかない現実を受け入れようと思い、思いを寄せ続けてくれた咲ちゃんと交際する事に。
彼女を選んだ理由は、複雑な家庭事情に苦しんでいた数年前の自分と姿が重なったから。
小学六年生の頃、俺が愛里紗に心を救ってもらったように、今度は自分が誰かの支えになれればいいなと考えていた。
咲ちゃんに愛里紗の姿を重ねて、自分なりに愛里紗を忘れる努力をしているつもりだった。
でも、幾度となくデートを重ねても心が弾まない。
恋をしてた頃のように、ワクワクドキドキしたり、怒ったり泣いたり、小さな事でムキになったり、些細な事でも嬉しかったり。
傷付いた時には心配して寄り添ってくれたり。
あの当時は人生の中で最もかけがえのない時間を過ごしていたし、甘酸っぱい恋の味を知ってしまっているだけに、心に浮き沈みのしない恋愛に魅力を感じなかった。