だが、彼は嫌がる素振りを見せる私などお構いなく、ガシッと腕を掴み身体を引き止める。
「まさか、ジェットコースター怖いの?俺がいるから大丈夫だって」
「絶対無理っっ…。乗れない!」
「最後まで手を握りしめててやるから早く行くぞ」
「ヤダ、行かないっ!死んじゃう。助けて!」
叫んで裏返った声はもはや悲鳴。
肝が据わらず情けない。
でも、結局……。
ジェットコースターから逃げる事が出来ぬまま引きずられるように中に連れて行かれてしまい、恐怖で青ざめた顔のまま列に並ばされた。
理玖は顔を引きつらせている私のテンションを上げる為に、あれこれ駆使して渾身のギャグを連発していたけど、それどころではない。
理玖の声が耳に入らないほど胸をバクバクさせていた。
そして、順番が回ってゲートが開かれ、ジェットコースターのシートに座り、安全ベルトにロックがかかった瞬間。
恐怖のあまり、一瞬だけ意識を失って白眼になった。
でも、残念ながらジェットコースターが発車した瞬間。
ガタンと大きな振動が体全体に響き渡り、再び意識が呼び起こされた。
怖いよー。
神様ー。
私はお化け屋敷よりも、絶叫マシンが苦手なんだよー!
俺が居ても居なくても関係ない。
怖いもんは怖いんだよぉ……。
半目涙になりながら乗っていたジェットコースターはゆっくりと車体を傾け、頂上へと真っ直ぐ進み始めた。