愛里紗は巨大な絶叫マシンの迫力に目を奪われると、足が竦みだした。
ジェットコースターの近くまで行くと、下からゆっくり見上げる。



天に突き上げるような立派な太い柱の上には、急な上り坂を描き、頂上に達して一度車体を安定させた後は、屈折するように地獄へと突き落とされる仕組みとなっている。

頂上はマンションの10階以上に相当するほど。



赤いレールの上り坂をゆっくり進んでじわじわと乗客の恐怖を煽り立て、頂上に着いて恐怖がピークを迎えた瞬間……。


一気に足元が崩壊してしまったかのように地上を目掛けて落下していき、その先のハートを描くような二回転で意識を奪った後は、つけまつげが飛んで行きそうなほどのスピードで円を二度描き、朝にスプレーで固めてセットしたおだんごの位置が遠心力により右にずれて、まるでたんこぶのようになってしまう仕組みとなっている。



ーーその先は、死。

口から泡が出てもおかしくないほど、意識を奪うシステムとなっている。




怖い……。
怖過ぎる。

怖すぎるのはつけまつげが飛んで行く瞬間や、遠心力によっておだんごの位置が右にずれてしまう事ではない。

スタート地点に戻って来た頃には身体に恐怖が叩き込まれてしまうから。

しかも、放心状態に陥った身体のまま出口の階段を降りなきゃいけないのに、ガクガクと揺れた足取りで歩く下り階段ですら、ジェットコースターに感じてしまっているからだ。





どうしてジェットコースターを一番最初に選んだのかな。

初っ端から絶叫マシンに乗ったら、お腹の中で消化しきれていない朝食がリバースしそうだよ。