翔くんは生涯で初めての彼氏だった。

それなのに、愛里紗に翔くんの事を知られたくなかったから、ロクに恋愛相談も出来なかった。


彼がノグちゃんに会ったあの日から愛里紗の姿を追い求めていても、私は誰にも悩みを打ち明ける事なく胸の中にしまっていた。



「……俺、好きな人を追い求めて幼い俺を捨てるような酷い父親を見て育ったから、自分は好きな人と幸せになりたいと思ってる。好きな人と一緒になるのが俺の夢だから……」



翔は頭を上げると、この上なく傷付いている咲に追い打ちをかけてしまう。
咲はその言葉にショックを受けると、ワーッと泣き崩れた。





どんなに努力しても。
どんなに最善を尽くしても。


彼の心が離れてしまってる以上、関係修復は不可能だと思った。



人の心は変えられない。



そう思ったら……。
全身の力が抜けて冷たい地面にペタンと座り込んでいた。





関係改善が不可能な両親。
それに、ケンカ別れしてしまった親友の愛里紗に次いで、自分が最も大事にしていたものが、また一つ目の前から消えていった。