雑音だけが耳に飛び込み、変哲もない状況を待ち続けても息が詰まる一方。
事態の好転に期待を寄せて、再び彼の心に王手をかけた。



「翔くんが好き……。いま以上に好きになってもらう努力するから、もっともっと大切にするから……」



全身全霊をかけて伝えた言葉が、彼の心に浸透するように願いを託した。


本当は、声も心も身体も全部独り占めしたい。
長年夢見ていた彼女の座についたのだから、何一つ手放せられない。



すると、職場からずっと背中を向け続けていた翔は、公園に着いてから初めて振り返り真っ直ぐに咲を見つめ、侘しい表情を向けたまま咲の手をゆっくり解いた。



「……ごめん。咲ちゃんの気持ちには応えられない」



翔はそう言うと、深々と頭を下げた。



まさかとは思うけど…。
私に頭を下げるって事は、もうダメなの?
翔くんと別れなきゃいけないの?

嫌……。
別れたくない。