ブロロロ………




無情にも愛里紗の願いは届かず。
翔の母親はブレーキを踏む事なく自宅方面へと車を走らせた。

だが、諦めきれない翔は小さな窓から身を乗り出すと、小さくなっていく姿の愛里紗に向かって叫んだ。



「オレハ…カナラズ…アリサヲ………」



ブロロロ……




大雨で声がかき消されてしまったせいか、愛里紗が聞き取れたのはそれが限界だった。



「谷崎くん………。遠くになんて行かないで…。離れたくないんだよ……」



どんなに泣き叫んでも。
どんなに全力で走っても……。

車は止まることなく、雨のカーテンの奥へと姿を消した。



頬を濡らしている涙は雨粒と判別がつかないほど全身ずぶ濡れ状態に。
でも、そんな事が気にならないほど私の心は崩壊していた。




愛里紗の母親は、娘に傘を差し出して手で簡単に水滴を払うと、慰めるように肩を抱いて家へと向かった。


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