彼の大きな背中は二人の間にそびえ立つ壁のよう。

二人に吹き付けている風は、互いの距離感を知らしめるかのようにひんやりと身を包む。



翔くん……。
愛里紗の事ばかりじゃなくて、一大決心をして唇を重ねた私の事も少しは考えてくれた?

私は五月から彼女になったけど、翔くんの気持ちに気付きつつも、今日まで振り向いてくれる事を願って頑張ってきたんだよ。



でも、そんな押し付けがましい事は言えない。


それを言ったら自分が損する。
今ここで愛里紗の名前を出してしまったら、翔くんの頭の中は再び愛里紗色に染まっちゃう。





やっぱりダメだよ……。
別れたくない。

愛や進展に欲深くなっても、翔くんと一緒にいるだけで幸せだから。