勤務を終えると、彼はいつも通り表情一つ変えずに私を連れてバイト先付近の公園へ向かった。




先日、数年振りに愛里紗に辿り着いた彼。

愛里紗の前で自分の彼氏だとアピールしたあの日から、仕事の時以外ほとんど口を利いてくれなくなった。


私達の関係はあの日から亀裂が入ったまま。
心の隙間風が吹き荒れる一方。




彼は私と少し距離を置いて黙って前を歩く。
冷たい背中を見るだけでも背筋が凍っていく。



翔は目的地の公園に到着すると、ベンチ前で足を止めた。
咲はまるで他人扱いするような態度に耐えきれなくなると、萎縮した態度を見せた。



「や…やっぱり、私…帰っ……」
「別れたいんだ」



翔は逃げるような素振りを見せた咲の言葉をかき消すかのように、背中越しに別れ告げた。


翔の固い決心は揺るぎない。
説得程度では応じないような毅然とした態度に。

一方の咲は、悪い予感が見事に的中。
ショックにより思わず顔を俯かせた。





彼は職場を出てからずっと背中を向けたまま。

だけど、半年以上交際している私には、彼が今どんな表情をしてるか大体予想がついた。