愛里紗は翔の予想外の登場に驚きポカンと口を開ける。



「谷崎くん…」



それがあまりにも急な再会で心の準備が出来ていなかったから、どんな顔を向けていたらいいかわからないけど……。
枯れきったと思い込んでいた涙は、再び瞳の中で生まれた。




「もう谷崎じゃないよ」

「…あ、そうだったね。翔くん、どうしてここに?」


「今日この時間にここへ来れば愛里紗に会えるような気がして……。そうしたら本当に会えた」

「偶然だね」


「街を離れた当時はまだ幼くて、住所は知ってても県またぎだし遠くて行けないなって思っていたけど……。いざ来てみると案外近かったんだな」

「そうかもしれないね…」



瞳に歪んだ姿が映し出された彼は、ニコッと笑みを浮かべた。



六年生以来に見せた笑顔は、春のうららかな日和のよう。

優しくて、
暖かくて、
穏やかで、
平和に満ち溢れていて…。

今朝までの卑屈な気持ちが一掃されてしまいそうなほど、私の心はこの笑顔に助けられていく。



やっぱり翔くんは咲の言うようなクールな人じゃない。

だから翔くんの存在に気付かなくて。
なかなか辿り着けなくて。
長い間、会えずじまいだったのかもしれないね。