どうして思い出の神社に足が出向いたのか分からないけど……。
多分、ここなら一人で思いっきり泣けると思ったから導いてくれたのかな。



片手で数えられる程度の参拝客を横目に、鳥居をくぐり抜けてから、誰もいない本殿の裏に周り、スカートを整えてから軒下に腰を下ろした。






忘れもしない。
ここは、谷崎くんと最後に二人きりで過ごした場所。


長い歳月を経ても軒下から眺める景色は何一つ変わらない。
ただ冬色に衣替えしているだけ。



ここから恋い焦がれながら吹いたシャボン玉は、向かいの木々の方へと泳ぐように飛び立って行ったね。

あの頃の木々はまだ青々しかった。



軒下に腰を下ろして空を眺めながら、ストローからいっぱいいっぱい新しい命を吹き込んだね。
シャボン液が全てなくなるまで吹き続けていたね。




愛里紗がボーッとした目で空を見上げてると、突然何処からか吹き付けてきた風が愛里紗の髪を揺らして頬を撫でた。


それは、まるで……。



『泣いてもいいんだよ』



…と、涙を堪えて唇を噛み締めている愛里紗に伝えるかのように。




その瞬間、強がっていた精神が崩壊した。

手で顔を覆い、肩を震わせて声を押し殺してすすり泣く愛里紗は、木々の葉が擦れ合う音に泣き声が埋もれていった。