すかさず愛里紗の方に顔を見上げたノグは、弁解をするように隣から身を乗り出した。



「でもね、あんたは小学生の頃から谷崎が好きだったけど、駒井さんも中学の頃から一途に…」
「ごめん。今日は帰るね」



これ以上ノグの話を聞き入れる気がなかったから、敢えて言葉を重ねた。



今からどんな言い訳をされても受け入れられない。
みんなが口裏合わせをしたかのように谷崎くんの存在を隠すから、私は彼と再会する以前の自分を捨てた。



ノグは咲の味方。
幼なじみの私の味方じゃないんだ。



一番ショックを受けたのは、周りのみんなは谷崎くんまで辿り着いていたのに、自分だけが取り残されてしまったかのように知らなかった事。



咲の裏切り行為。
母が隠した手紙。
それに加え、事実を知りながら口噤んだノグ。


立て続けにショックが続いて精神的にボロボロになってしまったせいで、もう誰を信じたらいいかわからなくなった。