愛里紗は左手で滴る涙を拭っていると、ノグは隣から髪を撫でた。
ところが、ノグからは更に追い討ちをかけるような言葉が伝えられる。



「黙っててごめん。…実は、少し前から駒井さんと谷崎の仲を知ってた」



愛里紗は再び衝撃的な事実を耳にして空気が固まった瞬間…。


ゆっくり。
ゆっくり……。


涙でびしょ濡れになりまさかといった半信半疑になっている顔を向け。

まるで聞き間違えを正すかのように、息が詰まりそうなか細い声で返事を煽った。



「えっ…………」

「八月下旬に渋谷で偶然二人に会ってね。その時に二人が付き合ってる事を知ったの。後日、駒井さんからあんたに交際してる事を内緒にしてくれって頼まれて……。別にあんたを裏切ろうとして黙っていた訳じゃない。駒井さんと約束してたんだ」



ノグはジーパンの膝元をギュッと強く握りしめると、まるで愛里紗に謝るかのように頭を下ろした。