一晩お世話になったノグの家では、散々疲れきっていたせいもあってグッスリと眠れて、身も心も休ませる事が出来た。

涙が枯れるほど泣いた昨日からすっかり腫れてしまった目は、今朝も引き続き重たく腫れぼったい。



ノグは部屋着のまま手ぶらで家を飛び出た私に、タンスから似合いそうな服を選んで貸してくれた。


ノグはスリムだからスカートはちょっとキツい。
でも、心が冷え切っている私には温かく感じた。





それから私達は朝食後に気分転換を兼ねて近所の公園へとやって来た。


冬の香りは鼻の奥をツンと刺激して喉元をくすぐるように通過していく。
唇から漏れる吐息は、まるでタバコの煙のように口元にほんわりと留まり、ゆっくり散るように消え去ってゆく。


頬が凍りつきそうな冷たい朝は、まだ時間が早いせいか公園には子供はいない。

ベンチに腰をかけ公園から歩道の方に目をやると、ランニングをしているおじさん、休日出勤と思われるサラリーマン、犬を散歩してる人々などが休日の街を行き交っていた。



「今日は家に帰れそう?」

「明日は学校だから帰らないとね」


「家に帰ったらおばさんと仲直りしないとね。親とは毎日顔を合わすから、何処かで妥協していかないと、いつか本当に辛くなる日が来るよ」

「…うん、わかってる」



ベンチに座り冴えない表情を覗かせる愛里紗に対し、ノグは昨日から引き続き心配して気にかけ続けていた。