気持ちがパンク寸前の愛里紗は、母にキッと疑いの眼差しを向ける。



「お母さん…。谷崎くんからの手紙をどうして物置に隠したの?」



母親は翔からの手紙を手にして詰め寄る愛里紗に降参したかのように目を逸らす。



「ごめんね……。愛里紗を悲しませるつもりはなかったんだけど、谷崎くんが引っ越してから、ご飯をロクに口にしないまま部屋に引きこもってたでしょ。その手紙が届いたら、また酷く落ち込んじゃうのかと思って」

「娘を心配してくれる気持ちはわかるけど、なにも隠さなくてもいいんじゃない?」


「手紙を隠したのは悪かったと思ってるけど、早く谷崎くんを諦めて元気を取り戻して欲しかったの」



身体を心配してくれる母の考えとは裏腹に、一方的な見解と独断を押し付けられた事が無性に腹が立った。



「私は谷崎くんからの手紙をずっと楽しみにしてたんだよ!お母さんは私が毎日ポストを覗き込んでいる姿を見てるから気持ちを充分知ってたはず」

「そんなに興奮しないで、少しは落ち着いてちょうだい」


「落ち着ける訳ないでしょ。何でお母さんの独断で手紙を隠すの?私がこの手紙をどんなに待ち焦がれていたかなんて、お母さんには分からない!」

「全て愛里紗の為を思ってそうしたの。毎日泣き崩れている姿を見届けていたお母さんの気持ちも少しは察してちょうだい」


「そんなの私には分かんない!お母さんの気持ちなんて知りたくもない!お母さんなんて……大っっ嫌い!」

「愛里紗…!」



破裂しそうな想いにブレーキが効かない。
やり場のない怒りと悔しさでキチガイになりそうだった。