返事が無くても何通も送り続けていてくれた谷崎くんからの手紙を私に渡すどころか、菓子缶に入れて物置の隅にしまい込んだのはお母さんだよね。
出張で家を空けがちのお父さんじゃないはず。
手紙を物置に隠したから、私が気軽に入れないように鍵をかけて、その鍵をエプロンのポケットにしまって持ち歩いてたのかな。
私が谷崎くんからの手紙を待ち望んでいる事を知りながら。
しかも、その手紙が気付かないように、こっそりポストから抜き出してまで。
お母さんは、私の味方じゃなかったの?
小六当時は、私達の恋を応援してくれていたのに。
まるで仲が良い姉妹のように。
時には親友のように恋愛相談にも乗ってくれたのに。
バレンタインの時は、チョコ作りを手伝ってくれたのに…。
誕生日プレゼントの手袋だって、あれこれ悩んでいた私の隣で一緒に選んでくれたのに。
前々から私を裏切っていたのは、親友の咲だけじゃなくて、家族のお母さんまで?
愛里紗の想像力は一気にエスカレート。
モヤモヤした気持ちは、あっと言う間に怒りへと様変わりする。