開けっ放しの物置の扉からは、しきりに冷たい風が吹き付けてくる。
震える指先で持つ手紙を涙で滲んだ瞳で再び読み進めた。



『俺が悩んでいた時、いつも隣にいてくれてありがとう。お前は俺の救世主。家にいる時は不幸の連続だったけど、お前がそばにいてくれたお陰で心強かったし幸せだったよ。』

「ううん……。私も幸せだった。辛い事があっても谷崎くんに守ってもらえたから」



『今は両親がケンカする声は無くなったけど、お前と会えなくなったから辛い。相変わらず家ではほとんど一人きり。昼間は時間をつぶすような神社もない。お前がにぎってくれたおにぎりだって、もう食べられないかと思うと残念だよ。』

「…谷崎くん。私もずっと辛かったよ。毎日悲しくて涙が止まらなかったよ」



『街に戻りたい。また、あの頃に戻れればいいのにな。』

「………うん、そうだね」



『会いたい。お前に……。』

「…………谷崎くん」



『街を離れても愛里紗が好きだよ。離れていてもずっと想ってるから。絶対忘れない。約束する。いつか会いに行くから待ってて。』

「…………っ」


『今井(谷崎) 翔より』



彼は私との約束を守ってくれていて、長らく待ち続けていた手紙は既に家に届けられていた。




ただ……。
その手紙が手元に届かなかっただけ。


毎日ポストを覗いても見つからなかった手紙が、どうして物置の隅に。
どうして束になって菓子缶の中に入っていたんだろう。



「谷崎くん…………っ」



愛里紗は読み終えた手紙を握りしめると、肩を震わせながらその場に泣き崩れた。