物置の隅で人知れず菓子缶の中に眠っていた彼からの手紙。
手元の分と先ほどまで箱の下敷きになっていた手紙の数を合わせると10数通ほどある。



ショックのあまり口元を押さえている手を震わせながら、積み重なっている手紙の上に手を重ねて左回転させて封筒の束をなぞるように軽くスライドさせると、手紙はキレイな扇型に広がる。

封筒にシワはほとんど見られない。
まるでその手紙だけが過去からタイムスリップしてきたかのように保存状態がいい。



埃まみれで服が汚れるとか、
お尻と太ももが地面についていて身体が冷えてくるとか、
座った時に缶の蓋を踏みつけて足にすり傷を負っても気が付かないくらい、頭が真っ白になった。



「谷崎くん…からの手紙…。届いて……たんだ……」



驚きとショックが重なったせいか、まともに言葉を発する事が出来ない。