この街に引越したばかりの小学六年生の頃、ちょっとしたイタズラ心で母を驚かそうと思って物置の中に隠れた事があった。
日が傾いてもなかなか見つけてくれないから、いつの間にか疲れてその場に眠り込んじゃって。
母は夜になっても帰宅しない娘を心配するあまり、パトカーを呼ぶ騒ぎを起こした事があったなぁ。
あの時はヒドく怒られた。
母の頭にツノが生えてた。
まぁ、夜まで一人娘が戻って来ないし連絡ないし、心配するのは親として当たり前か。
それ以来、母はイタズラ好きの私を物置から遠去けるように施錠するようになった。
鍵をエプロンのポケットに入れて持ち歩くほど警戒している。
もうイタズラをする年でもないのに、高二になった今でも鍵を持ち歩き続けている。
未だに信用されてないのかな。
若しくは、鍵を持ち歩くのが習慣になっているだけなのかもしれない。
叱られたあの日から自分自身も物置から足が遠退くようになり、物置はベランダの景色の一部になっていた。
物置の中は淀んだ空気と埃まみれの物。
あまりにも劣悪環境だから、正直長居はしたくはない。
扉の真横に置いてあるホウキとチリトリを取り出すと、物置から出て扉の取っ手に手をかけた。