ーー本格的に冬が到来した。
冷たい風に身震いするような寒い日が続き、最近コートの出番がめっきり増えた、十二月下旬に差し掛かった土曜日。
今日は午後から理玖とデートの約束をしている。
朝食を終え、着替えもせずに朝の情報番組をつけながらリビングのソファーでのんびり寛いでいると。
ガシャーン………
背後から突然平和を乱すような衝撃音が耳に入る。
「あら、やだ。手が滑ってマグカップを落としちゃった」
「お母さん、大丈夫?怪我してない?」
ソファーからひょこっと顔を出して、キッチンにいる母に心配の目を向けた。
「大丈夫よ。心配しないで」
「もーっ。お母さんったら、おっちょこちょいなんだから!これ、お母さんがお気に入りだったマグカップじゃん。ちょっと、気をつけてよ!」
「おっちょこちょいのあんたにだけは言われたくないセリフね。ほら、減らず口はいいから一緒に片付けを手伝ってちょうだい」
そうやって母といつものように軽く言い合いながらキッチンへと移動して、散乱した陶器の破片を一緒に一つ一つ拾い始めた。