ーー咲が谷崎くんと恋人関係に発展するまでの経緯をカミングアウトしてから、二週間が経過した。

あの日を境に咲とは友情に亀裂が入ったまま。
一度も口を利いていない。



期末テスト前に英語のノートを咲に返しそびれてしまった木村は、私がバイト先までノートを届けに行った日の翌日に直接本人に謝ったらしい。

この話は木村から聞いた。
木村の代わりにノートを届けに行った私にも『ごめん』と謝ってきた。






でも、あの日に木村がノートを返し忘れなければ、私はずっと谷崎くんの居場所を知らないままだっただろう。

この先もずっと、咲の心の中だけに真実がしまわれていたはず。



咲はケンカをした日の翌日から何度も謝ろうとしてきたけど、私は一切耳を貸さなかった。


隣から何を言われても無視。
背中越しに幾度となく繰り返される言葉すら聞き入れられる状態じゃない。

いくら親友とはいえ、今回の事ばかりは許容範囲を超えた。



咲は謝ろうと努力していたものの、毎回冷たく遇らう私に心が折れてしまったのか、次第に自分から話しかけなくなった。