愛里紗は身をブルブルと震わせながら咲に怒声を浴びせた。



「……正気なの?谷崎くんの存在に気付きつつも、自分の気持ちを優先させる為に私に隠し通すなんて。それに、彼の心を刺激する為に、私自身に同じ髪型を結わせて告白をしに行くなんて……。私がどれだけ谷崎くんに会いたがっていたか知っていたのに。ヒドイ……」

「翔くんの存在が明らかになった時に真っ先に伝えなかったのは悪かったと思ってる。自分でも後悔してる」


「私達親友なのによくそんな真似が出来るね。だからあんなに理玖を推し勧めていたの?」

「違う!愛里紗の幸せを願ってたのは本当だよ。理玖くんが愛里紗を大事にしてくれているのがこっちまで伝わってきたから、本気で応援してた。それだけは信じて!」


「どうかな……?後付けしたように幸せを願ってると言われても信じられない」

「後付けじゃない!理玖くんなら、私の代わりに愛里紗を任せられると思ったから…」


「今はどんな言葉も信じられないし、受け入れられない。もう、咲なんか知らないっ…。大っっ嫌い……。二度と私に近付かないで!もうこれ以上話したくない!」

「愛里紗っ………」



愛里紗は溢れかえる涙を次々落としていく。
話をする気力がなくなると、追いつかれぬようにと全速力でその場から離れた。