……でも、幸せな時間は長くは続かない。


高校に入学して半年経った頃から両親は不仲に…。
口喧嘩はいつしかエスカレートしていき、家族間の会話がなくなる日々を迎えて、心の行き場を失う生活が始まりを迎えた。



父と母。
顔を合わす度にケンカ。
原因はわからない。

きっと、大人には大人の事情があるのかもしれない。



家庭内の不和に私も兄も仲裁に入ったけど、なかなか思うように事が運ばれず、兄と二人して『この先大丈夫なのか』と、不安を抱く日々が続いた。



しかし、家族内で唯一心の支えだった社会人の兄は、両親のケンカに耐えきれなくなって今年の春に家を出て行ってしまった。

兄は『ここを離れて一緒に暮そう』と心配して言ってくれたけど、私はまだ高校生だから親元を離れる事が出来ずに険悪ムードの家に取り残される事に。



兄が家から離れると、次第に後悔の念に苛まれていった。



崩壊していく家庭に苦しんでいるうちに、心寂しくて誰かに寄り添って欲しくなった。

勿論、誰でもいい訳ではない。
心を支えて欲しかったのは、他の誰でもなくやっぱり翔くん。
大きな身体で抱き止めて欲しいと、心から思うようになっていた。