中学生だった当初を思い浮かべながら、彼との出会いを事細かく説明をしている咲。
時たま肩を震わせたりひと息ついたり、ゆっくりとした口調になりながらも、何処となく落ち着きがない。
中学生時代の恋愛話は、何となく聞いた事はあった。
でも、詳細を聞いたのは今日が初めて。
今まで空想を思い描いていたせいか、妄想で黒塗りだった恋のお相手の顔は、残念ながら谷崎くんの顔として当てはまっている。
咲は翔との思い出話を一息つかせると、視線を膝元に落として小さく頷く愛里紗の表情を伺うかのように目を向けた。
だが、愛里紗が落ち着いて話を聞いている姿勢を確認すると、一度話に区切りをつけた。
「告白話までは聞いてるよね」
「…うん、覚えてる」
「じゃあ、話を少し飛ばして三回目の告白の前から続けるね」
咲は不器用に鼻をすするように息を吸い、再び緊張感を漂わせる。
愛里紗はまだ話の糸口が見えない。
だから、素直に話に耳を傾けるしかなかった。
そんな愛里紗だが、一瞬だけ嫌な予感が過った。
それは、咲が唇をガクガクと震わせ始めた瞬間だ。