彼の何気ない仕草。
風に靡く黒髪。
窓際で光を浴びながらノートに書き綴っている長い指先。
大きくて広い背中。

そして、胸に響いていく低音ボイス。



同じクラスとはいえ接点は0に近いけど、私には特別なオーラを感じていた。
彼の何処が好きかと聞かれたら、他の色に染まらない雰囲気だと真っ先に答えると思う。



中には『あんな無愛想なのにどこがいいの?いいのは顔だけでしょ?』と、嫌味を言う人も。

でも、恋のタンクが溢れそうになっている私には関係ない。
マイナス要素が含まれている言葉には左右されずに、積み重なっていく恋心に幸せを感じていた。





ーーでも、いつしか噂で知った。

彼の両親は離婚をしていて、今は母親と二人きりで暮らしているという事を。



諸事情を知った時は、心に傷を負っているから感情を表に出さなくなったのかと思った。

何処か同情している部分もあったけど、母性本能が刺激されてしまったせいか、笑顔を取り戻してあげたいと思うように……。



それから、中二の秋に思い切って告白を決意した。



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