担任は生徒手帳の名前を確認した後、タイミング良く扉の向こうからやって来た私を発見すると、そのまま手を伸ばしてハイと生徒手帳を向ける。



「駒井〜。コレか?いま取りに来たのは」

「あっ、はい!その生徒手帳……です」


「彼が拾って職員室まで届けてくれたから礼を言って。タイミング良かったなぁ」

「あっ…はい!…あの…拾ってくれてありがとう」



見つかった嬉しさと拾ってもらった申し訳なさでコクンと頭を下げたその先の彼は、同学年で何度か目にした事があった。



翔くんはいつも無表情で年の割には背が高くて落ち着いた雰囲気を醸し出していたけど…。
間近で見たら、まつ毛が濃くて長くて瞳が美しく輝いていて、顔が小さくて整っていて見惚れてしまうほどのイケメンで……。


頭を上げてから彼に目を向けた瞬間。
瞬きをする間もなく恋に落ちた。



「あぁ」



彼は平然とした表情で無愛想な返事をした。



ーーそれが、初めての会話だった。


クラスも名前も知らない…。
だけど、イナズマ級の恋のトキメキはこの日からスタートを切った。