時にペンの滑りが悪くなっている解答用紙。
丸暗記したはずの簡単な方程式が思い出せずに、解答用紙に無意味にペンでトントンと叩く。



欠いた集中力と、壊れそうになっているハートのバランスが一定に保てない。
情緒不安定になっているせいか、潤んだ瞳からは涙が滴りそうになっていたから唇を強く噛み締めた。



静まり返っている教室内には、ズビッと鼻をすする音が漏れる。
だから、これ以上音が漏れないように息を止めた。

涙が出たら、あくびのふりをして制服の袖で拭えばいい。



過去から昨日までの谷崎くんの姿を思い描き、すっかり興奮してしまった昨日は、帰宅後も勉強が手付かずで夜の寝付きも悪かった。