「コレ、持っていて」



翔がゴソゴソと右ポケットから取り出して愛里紗に手渡したのは、ラインストーンが入っているピンクのイルカのストラップ。



「これは?」

「少し前に小遣いで買ったんだ。コレ、俺とお揃い」



翔は反対の手で色違いのブルーのイルカのストラップを指に絡ませて愛里紗に見せた。



「カワイイ…。ありがとう!谷崎くんとお揃いだなんて嬉しい…」

「もし俺達が離れ離れになったとしても、このストラップがいつか二人を引き合わせてくれるかもしれないから、大切に持ってて」


「うん!大切にするね!」



愛里紗は嬉しくて顔をほころばせながらストラップを両手でギュッと握りしめていると…。

小さな町に響き渡るほどの大きな声が段々近づき、神社の軒下に身を潜める二人の耳まで届いた。



「愛里紗~。どこに居るの?」

「翔~。聞こえたら返事をしてちょうだい」



お互いの母親が一緒に探している声が耳に入る。
すると、翔は愛里紗に向かって人差し指を口元に当てた。



「しっ…」



翔は愛里紗の肩を抱いて屈みながら足元に身を潜めた。