ーー咲のアルバイト先のイタリアンレストランのガラス扉を開けて店を出てから…。

どうやって電車に乗ったのか、
何時に家に着いたのか、
帰宅してから母に『ただいま』の挨拶をしたのか…。


今は頭が混乱しているせいか、そんな単純な事さえ思い出せない。



だけど、次々と溢れ出す涙が止まらなかった事だけはしっかり覚えてる。

それは、瞳に溜まっていく涙がこれ以上溢れないように、家に到着するまでちぎれてしまいそうなほど唇を強く噛み締めていたから。



もう二度と会えないかもしれないと思っていた谷崎くんと運命的な再会を果たした瞬間、私の脳内は谷崎くん一色に染まった。

それと同時に、咲が谷崎くんの彼女だと伝えてきた時は、信じられない気持ちでいっぱいに……。