私の初恋相手の谷崎くんが…。
今は咲の彼氏に。

嘘……。



愛里紗は先程ふと何処かで聞いた名前だと思っていた《今井》という名字は、以前咲から聞いていた名前だと思い出す。



『……で、彼は何ていう名前だっけ?前に聞いたっけ?忘れちゃったよ』

『えっ?!あ…、え……ええっと、しっ……』


『………うん。しっ?』

『…違う。今井くん』



あの時は彼氏の名前をすんなり言わなかったから、少しおかしいなと思ってた。



…でも、それだけじゃない。
咲は理玖からも同じ質問を受けていた。



『へーっ。彼氏の名前は?』

『……あっ…い、今井…くんって言うの』



そう……。
私は彼女の口から彼氏の名前を二度も聞いていた。
あの時は紛れもなく《今井くん》だと言ってた。



咲の言っていた今井くんは谷崎くんの事だったんだね……。
名字が変わっていたから全然気付かなかったよ。



でも、咲の彼氏があの谷崎くんだなんて信じられない。



谷崎くんの手を握りしめている咲に現実を知らされた瞬間、彼の香りを忘れていた私の胸にギューっと締め付けられるような痛みが襲いかかってきた。