谷崎くんがいま目の前にいる。


夢みたい。
でも、夢じゃない。

こんな近くにいたんだね。
知らなかったよ。


またいつか必ず会えるんじゃないかって思って、会える日を心待ちにしていたんだよ。





再会するスタンバイは出来ていても、いざ本人を目の当たりにすると高揚感に打ちひしがれてしまっているせいか、次の言葉がなかなか出てこない。



「あっ……あっ………」



愛里紗は目頭をじんわり熱くさせて震える指をゆっくり翔に向けるが、感極まっているせいか、声を発するだけでも精一杯に。
まるで幽霊でも見てしまったかのような反応に近い。


一方、驚愕している翔も数年ぶりに再会した愛里紗から目を外すことが出来ずにガクガクと唇を震わせている。



「あ…………り…さ」

「谷崎…くん……」


「あっ、いや…」



一瞬視線を落とした翔の胸には、《谷崎》ではなく《今井》というネームプレートが付いている。
愛里紗はネームプレートを見てふと思い返した。



…えっ、今井?

あ、そうか!
思い出した。

谷崎くんの両親が離婚して引っ越したんだったね。
確か、母親側について行ったから名字が変わったんだよね。



でも最近…。
何処かで聞いた名前。

いつだったかな?
今は頭が混乱していて思い出せそうにないや。