少し癖っ毛な黒髪も。
長いまつげで目を細めながら真っ直ぐ私を見る瞳も。
昔はあんなに細かったのに、今はがっしりした身体も。
雪の日に寒そうにしていた私の手をギュッと握りしめてくれた細くて長い指先も。
一番近くで名前を呼んでくれた声も。
あの時『手紙を書くよ』と言っていた唇も。
いつしか忘れてしまっていた恋の香りも…。
全部全部……。
谷崎くんじゃん。
私達、ようやく会えたね。
ーーでも。
残念な事に『会いたかった』のひとことが言えない。
その理由は、いま私を一途に愛してくれる大切な人がいるから……。