すると、彼は突然私の両手首をギュッと握りしめて、30センチ手前まで身体を引き寄せた。
「俺、この街から離れたとしても愛里紗とは離れたくない」
彼の瞳は真剣そのもの。
つめたく冷えきった指先からも痛いほど気持ちが伝わってくる。
「私も谷崎くんと離れたくないよ…」
愛里紗は涙を流して声を震わせながらで翔に伝えた。
翔は離婚を決断した母親を困らせようと思って昼間から逃げ回っていた。
自分が忽然と姿を消したら、気持ちを察して引越しだけでも考え直してくれるんじゃないかと思っていたから。
一方の愛里紗は、両親を困らせるつもりはなかったが、翔の味方についた。
自分が力になれば少しは状況が変わるかもしれないと思い、勇気を出してストライキを履行した。