愛里紗は左手の二つ先の窓側の四人席に案内されると、鞄から出した英語のノートとイチゴ飴を重ねてテーブルの右側に置いた。

久しぶりに入った店内でソワソワしながら、オシャレな西洋風の店内を見回す。



咲を追いかけるように学校を出て来たけど、出発する時間が遅かったから勤務前にノートを渡す事は出来なかった。
私がバイト先に来てる事を知ったら驚くかな。



でも、今回ばかりは仕方ないよね。
ノートが手元に無くて勉強に支障をきたしたらシャレにならないし。

有無を言わさず来店したから迷惑かもしれないけど、理由が理由だけに許してくれるよね。




愛里紗は日が傾き始めている窓の外の景色を眺めていると、窓に姿を映し出されている自分の向こう側に従業員の姿が映った。



「いらっしゃいませ。こちらメニューとお冷になります。ご注文がお決まりになりましまら、お手元のブザーを押してお呼び下さいませ」

「あっ、はい」



頭上から接客してきた声は、先ほどの女性従業員ではなく男性の低い声。

手際よくテーブルにメニューが置かれたと同時に、窓からテーブルへと移した目線の先にちょうどお冷が置かれた。


……と、その時。



フワッ…



以前、何処かで嗅いだような香りがふと鼻に漂った。