愛里紗は駅の改札を出てから1分歩き、咲のアルバイト先のイタリアンレストランに到着。
全面ガラス張りの店内は、ロールカーテンが半分まで閉ざされていて外から中の様子が伺えない。
この店に来るのはいつ以来かな。
確か咲がアルバイトを始めるよりも前だったね。
咲の家に泊まりに行った時に二人でランチに来た事があったよね。
店の前で来店した時の思い出に浸りながら、重いガラス扉に手をかけゆっくり押し開けた。
チリン……チリン……
ガラス扉の上部に設置されているドアベルが鳴ると、女性従業員が店の奥から少し早足でやって来た。
もちろん咲ではない。
電車の繋ぎがスムーズだったお陰で時間はまだ17時前。
予定よりも少し早く到着した。
軽く店内を見回しても客は二組程度。
従業員はいま出てきた女性しか見当たらない。
「いらっしゃいませ〜。お客様はお一人様でいらっしゃいますか?」
「あっ、はい」
「お席へご案内します。こちらへどうぞ」
制服姿で戸惑う私に明るい声と笑顔で出迎えてくれたのは、白いシャツに黒のベストとパンツ姿の20代前半くらいの女性店員だった。