「それ……、三時間目直前に咲に借りたノートじゃない?」

「駒井に返すの忘れてた…。明日から期末テストなのに……やべぇよ」


「咲がノートを貸した時に『明日から期末テストだからすぐ返してね』って言ったのを忘れてたの?」

「…悪りぃ。英語の授業の後、移動教室があったからすっかり忘れてた」


「忘れてたで許されると思ってるの?あんたのせいで、咲のテストの点数が落ちたらどうしてくれるの?咲は教師を夢見てK大に行こうとしてるんだよ。木村は咲の夢を応援していないの?」

「ごめん……」


「謝るのは私じゃないっ!最悪!もう、信じられないっ!」



愛里紗は木村に腹を立てると、眉間にシワを寄せたままロッカーに戻って残りの荷物をカバンの中に放り込み、黙って俯く木村からノートを奪い去って、アルバイト先に向かう咲の後を追った。


歪に膨らんでいる英語のノートには、木村がノートを借りた時のお礼として渡しているいつものイチゴの飴が挟まっている。