二学期の期末テストを翌日に控え、終礼を終えた生徒達がパラパラと帰宅して行った放課後。


愛里紗は教室の後方に設置されているロッカー内に置きっ放しにしてあった教科書やノートを持ち帰る為に、ロッカー内を覗き込んで整理整頓をしていた。


すると、廊下側から騒がしい足音がしたのでふと目をやると、後方扉から木村が切羽詰まった表情で教室内を覗き込み、愛里紗を見つけた途端声をかけた。



「ねぇ、江東!駒井は?もう帰っちゃった?」

「咲はバイトだから先に帰ったよ」


「マジかよ。やべぇ…」



木村は咲の不在を知った途端ガクッと肩を落とす。
明らかに様子がおかしいので何かと思い、木村の元に向かって聞いた。



「咲に何か用でもあったの?」



至近距離で見ると、木村は額から冷や汗を垂らしていて顔色は真っ青に。
不意に目線を落とすと、手元には歪に膨らんでいる英語のノートを握りしめているが、名前欄には咲の名前が書いてある。

そこで、ようやく事態の深刻さに気付かされた。