…でも、これは理想のキスじゃない。


私が夢見ているキスは翔くんの方から。
気持ちが通じ合ってて、思いっきり照れ臭くて、お互い恥ずかしくて頬を赤く染めちゃうような甘ったるいもの。




だけど、現実は程遠い。

翔くんの気持ちを待ち続けてるだけじゃ夢は叶わない。
残念な事に自分からのキスでも舞い上がっちゃうくらい今は幸せ。

悔しいけど、自分が積極的にならなければ進展が見込めないと思った。





彼の唇からそっと離れると、彼は私の肩に両手をかけてゆっくりと身体を引き離した。



「……時間が遅いし、もう帰ろうか」



彼が何事も無かったかのような口調でそう言った瞬間、目の前が真っ暗に。



交際をスタートさせてからの半年間。
ファーストキスに無反応な彼の気持ちが、1ミリたりとも自分に向いていないと気付かされた瞬間だった。