…ねぇ、気付いてる?
翔くんは夏休みの終わりにノグちゃんと街で再会したあの日から、ずっと様子がおかしいんだよ。
あれからもう二ヶ月以上も経ってるのに、翔くんの気持ちはあの日に残されたまま。
『あぁ』
『そうなんだ』
『へぇ…』
何を話しても機械的な返事。
私への質問どころか自分の話もしない。
ただ、話に頭を頷かせるだけ。
昔の街を離れてから長い歳月が経ったから、過去はもう忘れたんじゃないかなって思っていたのに……。
新しく生まれ変わる為に私と付き合い始めてくれたと思っていたのに。
塞ぎ込んでる様子や何かを考えているような仕草を見ると、嫌な予感が過ってしまう。
「じゃあ、公園。お茶しなくていいから、10分だけ付き合って」
咲は駄々をこねるようにそう言うと、うんともすんとも言わない翔の腕をグイッと引き、半ば強引に近所の公園へと連れて行った。